2008年11月28日

米国株は1933年以来の急騰 11/27

米国株は1933年以来の急騰

11月27日

森  崇

先週21日(金)以来、26日(水)まで4日間でのS&P500指数の上昇率は1933年以来の高水準となった。その背景を見てみよう。


(背景)
1.オバマ次期大統領の経済チームの強力な布陣から、景気浮揚期待が高まった。
オバマ次期米大統領は26日、新しく設立する大統領経済回復諮問委員会の委員長にポール・ボルカー元FRB議長を起用すると発表した。オバマ氏はまた、シカゴ大学のオースタン・グールズビー教授(経済学)を同委員会の実務者のトップに起用することを明らかにした。

オバマ政権の主要メンバーが続々決定。期待される人材が多く、これも相場の支援材料となった。オバマ米次期大統領は24日、来年1月に発足する新政権の財務長官にティモシー・ガイトナー・ニューヨーク連銀総裁を起用すると発表した。ホワイトハウスの国家経済会議(NEC)の委員長にはローレンス・サマーズ元財務長官を指名。経済諮問委員会(CEA)委員長にはカリフォルニア大学バークレー校のクリスティーナ・ローマー教授、内政委員会の委員長にはメロディ・バーンズ氏を起用するとした。

2.シティ・グループ救済が報じられ、金融株に安心買いが幅広く入っている。
FRBと米財務省、米連邦預金保険公社(FDIC)は23日、シティグループが抱える不良資産3060億ドル(約30兆円)を保証する救済策を発表。損失が一定額を超えた分を政府が肩代わりする。同時に200億ドル(約1.9兆円)の公的資金も注入する。保証対象の資産は、値下がりの激しい住宅ローンや商業用不動産ローンを裏付けとする証券化商品など。保証や資本注入の財源には金融安定化法で定めた計7000億ドルの公的資金をあてる。これで大手金融機関破綻懸念が緩和された。

3.追加景気対策が好感された。
オバマ次期米大統領と民主党が、追加的な景気対策の規模を最大7000億ドル(約67兆円)とする方向で検討に入ったと、24日付ワシントン・ポスト紙が報じた。 大恐慌時のニューディール政策以来の大規模な財政出動。 オバマ氏は、大統領選で1750億ドル規模の景気対策を訴えてきたが、景気の一層の悪化を受けて、大幅に積み増すことになる。

4.FRBは25日、信用凍結の緩和に向け、最大8000億ドル(約76兆9000億円)規模に上る2つの措置を発表した。これが信用凍結緩和に貢献すると好感された。

@FRBは政府支援機関(GSE)が発行もしくは裏付けている債券を最大6000億ドル購入する。
A消費者および中小企業融資を支援するため、最大2000億ドル規模の新たな制度を設立する。

5.世界の主要経済ブロックが景気浮揚で足並みが揃ってきた。

@中国が景気浮揚に向け、過去11年で最大幅の利下げを実施したため、需要増加期待から原油、銅などに買い物が入るとともに、素材株が全般しっかりだった。
A欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は26日、総額2000億ユーロ(約25兆円)規模の景気対策を発表した。来月11〜12日のEU首脳会議で承認される見通し。来月11〜12日のEU首脳会議で承認される見通し。財源は加盟国政府が分担する。中小企業への低利融資拡大、失業者の就業支援、製造業の研究開発助成などが柱となる。欧州単一通貨ユーロ圏では、財政赤字をGDPの3%以内に抑えることが各国に義務付けられているが、欧州委員会は、2009年から2年間に限って上限超過を容認する方針を示したまた、域内の個人消費促進策として、付加価値税の減税を検討するよう加盟国に勧告した。今回の景気対策の規模はEU全体のGDPの約1.5%にあたる。

6.自動車業界救済への期待が高まった。
ゼネラル・モーターズ(GM)
ゼネラル・モーターズ株が大幅高。同社の無担保社債を保有するフランクリン・リソーシズとPIMCOアドバイザーズに、最大で額面の3分の1への債務減額を求める可能性があると言う。米政府からの支援を得るために、債務再編で負債を圧縮する必要があるため。これが成功すれば、再建計画への評価が高まり、政府からの救済を仰げる可能性が高まるとの見方が背景。

ペロシ米下院議長とリード民主党院内総務は250億ドル規模の自動車業界救済の条件として、12月2日までに再建計画を提出するよう各社に求めた。議会は早ければ8日にも救済案について採決する公算だ。

7.ヘッジファンド解約による大口売りが減少。
12月決算のヘッジファンド解約に伴う45日ルール(決算期末の45日前までに解約請求する)の最終日が11月中旬に通過したこともあり、海外勢の大口売りが減少した。

ファンドの動きとしては、解約に応じるための換金売りが一巡、運用成績の悪化による解約の一時停止、といった状況にあり、短期的には、10月のような大口の売りが殺到する事態は収拾しつつあるように見える。スイスのヘッジファンド、ゴテックス・ファンド・マネジメント・ホールディングスは、全運用資産のおよそ65%に相当するファンドについて解約を一時停止したと発表している。

ヘッジファンドの大口解約が相次ぐ場合は、グローバル運用の立場上、米、欧、日と言った流動性の高い市場に換金売りが集中する結果、同時株安現象をもたらす。しかし、最近は、日本が高く、欧米が安いと言うような不揃い現象も見られるようになった。これは、大口換金売りが収まってきたことを示すものである。
 
8.金融危機打開のための処方箋が提示され始めた。
金融危機を沈静化させるための具体的な処方箋が出始めている。これによって金融システムの問題点が浮き彫りになるとともに、病巣の実態が明らかになり、市場に蔓延していた不安感が緩和されつつある。

バロンズ紙をはじめ、各方面からの提案をまとめると、おおよそ以下のようになる。

@米国経済は目下リセッションに陥っている。市や州の財政の窮状も甚だしい。公共投資を含む景気対策(3000億ドル以上の規模)を早急に実施する。消費者の信頼感を回復させるとともに、金融システム強化にも役立つ。
A住宅差し押さえ回避のために、銀行と住宅ローン借り手との間に交渉の場を設ける。政府が介入し、遅延案件につき、返済意志のある住宅ローン借り手に対する融資条件緩和を図る。
BGM、フォード、クライスラーの救済。救済に際しては、経営陣はもとより、労働者、株主、サーベラス(クライスラー、GMACを所有しているプライベート・エクイティ会社)から大幅な譲歩を引き出すことが必要。また、燃料効率の高い車や、代替燃料車製造を約束させれば、環境浄化、原油依存度低下にもなり、一挙両得。連邦破産法を申請しても、再生途上でつなぎ融資を受けられず(信用収縮で貸し手不在状態)、清算することになってしまうだろう。そうなると、何百万人もの失業者を出すことになり、経済への打撃は更に大きくなる。
C風説の流布、相場操縦などの監視を厳格化するとともに、空売り情報をもっと頻繁に公表する。受渡し未了取引データや、空売り残の公表も、もっと頻繁にさせる。
DCDS(クレジット・デフォルト・スワップ=貸付債権の信用リスクを保証してもらうオプション取引)市場の整備。CDSの中央清算機関の設立や、CDS市場の透明性向上を図る。受け渡し価格のリアルタイムの報告や、投資家の持ち高状況や担保が十分かどうか確認できるようにする。
E保護主義の排除
保護主義は、近隣窮乏化をもたらす。また、低賃金で生産性の高い外国製品の輸入を阻害することにより、国内産業の非効率性を温存し、ひいては、国民が、割高な製品の購入を余儀なくされるし、競争力低下から、国内産業が脆弱化する。


私見
当面の試練は、自動車業界の救済が実現するか否かである。特に、自動車産業支援に関し、再生への道筋がないまま資金支援をするのは問題が多いとし、共和党が金融安定化法を活用した支援に慎重な姿勢を示しているためである。ビッグ3は、12月はじめに再生計画提示を求められている。その意味では、債務減額で、大口社債保有投資家と交渉するのは有効であろう。債務軽減が実現すれば、議会に救済要請をするのに説得力が増す。

さて、オバマ新政権の閣僚メンバー発表を行っている。これまでのところ、強力な新陣営が誕生しつつあり、市場への力強いメッセージになっている。

次は、追加景気対策であろう。金融サミットで、15日採択された宣言には、直ちに取るべき措置として合意した項目に、適宜迅速な効果を上げるための内需刺激に向けた財政政策が挙がっていたが、これも早急に必要な措置である。既に7000億ドル規模の財政出動の検討に入ったもようだが、1月20日大統領就任式まで政治的空白期間を作らないスピードが大切だ。   
posted by mori at 08:50| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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