2008年10月24日

直近米国株乱高下の背景 10/23

直近米国株乱高下の背景

10月23日

森  崇


11月4日の大統領選挙が終了しない限り、金融危機に向けた大きな動きは期待できない。この間隙を縫って、ヘッジファンドが果敢な売りを仕掛けている。

この結果として、出来高が少ない中、やたらとボラティリティーが大きい。今日など典型的なトレーダー相場だったと言っていいだろう。ダウ指数が8,250ドルを下抜けないと見るや、怒涛のよう空売りの買戻しが入り、引けにかけ相場は急反発に転じた。

ヘッジファンドも多くは破たんの危機に瀕しているが、中には、空売りで最後の危険な賭けに出るファンドもかなりあると聞く。

しかし、一方で空売りが入る環境が確かに醸成されている。以下の通りである。

1.新興市場にほつれが生じている。世界的な景気減速で新興市場国の輸出需要が損なわれるとの懸念が背景。

新興市場国の国債のスプレッド(米国債との利回り格差)は23日、6年ぶり高水準に達している。アイスランドやパキスタン、ハンガリー、ウクライナ、ベラルーシが、国際通貨基金(IMF)の緊急融資を申請している。通貨も下落中だ。23日の外国為替市場では、メキシコ・ペソが対ドルで最安値を記録した。ペソは過去5営業日連続で下落している。

アルゼンチンでも、フェルナンデス大統領が発表した民間年金基金の国有化計画を受け、債務のデフォルトへの懸念が強まっている。300 億ドル規模の民間年金基金を国有化する法案を議会に提出する方針を明らかにした。950 億ドル相当の国債がデフォルトとなった2001 年以降、アルゼンチンの国際債券市場からの資金調達は途絶えたままだ。今回の金融危機局面で、政府がなりふり構わぬ態勢に入り、遂に民間の年金基金に手をつけることになったとの見方も強い。

2.ヘッジファンドに破たん懸念が高まっている。
@ヌリエル・ルービニ・ニューヨーク大学教授(経済学)は23日、以下の通り発言した。
★金融危機が投資家の一斉売りを引き起こし数百本のヘッジファンドが破たん、当局は1週間以上にわたり金融市場を閉鎖しなければならなくなる恐れもある。

Aヘッジファンド会社GLGパートナーズの共同CEO、エマニュエル・ロマン氏もルービニ教授と同じ会議で、以下の通り発言している。
★ヘッジファンドの最大30%が閉鎖に追い込まれるだろう。適者生存という法則に従った形で、多くのヘッジファンドが姿を消すだろう。ヘッジファンド業界の年初来の成績は20年で最悪となっている。9月は10年で最悪だった。

3.米国では比較的健全な銀行に過剰な資本注入が実施されそう。そうなると問題を有した中小の金融機関に破綻の可能性が高まる。ポールソン財務長官も金融安定化法は、全ての金融機関救済の為に存在しているのではないと言明している。

4.金融危機に瀕して、米国が具体的かつ大規模な救済策を打ち出している反面、ヨーロッパのスタンスは、英国を除いて見劣りがする。ユーロの対ドル下落が際立っている背景でもある。従って、これからヨーロッパが相場の足を引っ張る可能性がある。


結論
目下米国では決算発表がたけなわだが、主要企業の業績内容を見る限り、予想を上回るものが多い。ただし、好決算で買われる銘柄も、2日ともたないのが最近の状況である。これは、上記のような要因を背景にした売り圧力が存在することを示している。大統領選まではまだ不安定な動きが続きそうだ。  
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2008年10月10日

ポールソン発言で明らかになった財務省のスタンス

ポールソン発言で明らかになった財務省のスタンス

10 月9 日

森 崇


財務省は、数週間後には本格的な買い取りを始める見通しだが、ここにポールソン長官発言で明らかになったポイントを列挙してみる。

★金融機関の資本注入は可能だが、全金融機関を救済できない。いくつかの金融機関は失敗するだろうが、安定化法はすべての金融機関を救済するためのものではない。対象金融機関は健全、非健全双方である。
★機動的に資本を強化できる枠組みができた。
★実施には議会への書面による報告が必要だが、議会からは幅広く、柔軟な権限を得た。
★財務省が銀行などから買い取ることができる資産は、住宅ローンや関連証券、および財務長官が連邦準備制度理事会議長と相談し、金融市場の安定を促進するために必要だと判断した金融手段と定義されており、幅広い金融商品が対象。資本注入に使える優先株など株式も対象に入っている。


(日本で公的資金の資本注入をした際の手法)
日本で1999 年3 月に公的資金の資本注入をしたとき、金融監督庁と日銀の共同で大手銀行の集中検査・考査をして、財務の状況を確認した上で、必要な規模の金額を注入。財務を把握した上での規模なので、納得感があった。

(今回の米国財務省のスタンスに対する問題点)
緊急時には個別の金融機関の株式を買い上げる資本注入を実施する構えと見られるが、救済対象金融機関の選択基準、時期、投入資金規模が不透明。


=以上=
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2008年10月08日

当面予想される金融危機対処法 10/7

当面予想される金融危機対処法

10 月7 日

森 崇


本日の米株下落の主な背景は、信用危機が深刻化する中、特に、不動産投資信託(REIT)が資金不足に陥っているとの観測から売りが集中したことだ。とりわけ、ゼネラル・グロース・プロパティーズ(GGP)が悪役となった。

同社は、シカゴ本拠で、ショッピング・モールを経営しているが、今年年末までに到来する12 億ドルの債務借り換えが出来ないかもしれないとの懸念から42%下落した。

リーマン・ブラザーズ破たん後、これまでどうにかもっていた社債市場が機能不全に陥り、企業の資金調達が支障をきたしていた。CP と言う手段もあるが、CP を発行できる企業は格付けの高い企業が多く、この市場でさえ、FRB が支えなければ、機能しなくなっていたのだから、社債市場の閉塞状況は、察するに余りあるものがある。

本日のゼネラル・グロース・プロパティーズの株価急落は、信用収縮の度合いが更に進んでいることを示している。

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また、不動産投資信託の金融不安は、ここからの受注で食っていた住宅建設会社の売上金回収不能懸念を呼ぶ。以下が住宅建設大手レナー株の6 ヶ月間チャートである。正に、連鎖破たんを懸念した動きである。

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さて、当面の、金融危機への対処法は何だろうか。まず、銀行の信用創造機能回復を図り、信用収縮に歯止めをかける必要がある。

危機の連鎖によって引き起こされている信用収縮を食い止めるには、銀行などの金融機関に公的資金を注入し、自己資本を増強することだ。これは日本の例を見れば明らかであり、金融機関への公的資金注入が始まって株価は落ち着いた。

その意味で、今回米国で成立した金融安定化法を使い、金融機関の優先株を買うことで資本注入する方法があげられる。これは即効性がある。

また、緊急大幅利下げも考えられよう。原油はじめ商品価格が下落しているため、インフレ圧力は低減しており、以前より利下げしやすい環境になっている。FFレート先物市場は、10 月FOMC 時での0.5%利下げをほぼ100%織り込んでいる。FFレート大幅引き下げにより、プライム・レートが下がり、これに連動するホーム・エクイティ・ローンをはじめとする各種金利も下方誘導される。


金融機関の破たんは欧州でも拡大し、銀行の国有化、救済合併、預金の全額保護などの措置が相次いでいる。ただし、英仏独伊の4ヶ国は緊急首脳会談を開いたものの、銀行の救済基金については合意できなかった。

欧州は共通通貨のユーロを導入し、金融面での統合が行われた。しかし、財政は別で、各国が独自に対策をとる仕組みになっている。ここに不信感が高まっているのだ。

週末には先進7ヶ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)があるが、これまでに無いほど重要性が増している。


=以上=
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2008年10月07日

金融危機への対策について 10/6

金融危機への対策について

10月6日

森  崇


(今日の株安震源地は欧州)
欧州の金融市場が大混乱に陥っているのは、英仏独伊の4ヶ国首脳が4日に開いた会議で銀行救済基金など抜本策を打ち出せなかったためだ。

4ヶ国首脳による緊急会議では、単一通貨ユーロに加盟する国に、財政赤字を国内総生産の3%以内に収めるよう義務付けた安定成長協定を一時棚上げにするなど、一定の成果を上げた。しかし、銀行救済基金構想は、過大な負担を避けたいドイツなどの反対によりまとまらず、市場の失望を誘った。

しかし、5日夜、事態が急転した。総資産約60兆円近いドイツ不動産金融大手ハイポ・リアル・エステートが資金繰り悪化で破たんしかねない事態に陥った。アイルランドやギリシャなどが導入した預金保護に批判を強めていたドイツ政府は、一転して個人預金の全額保護に踏み切った。


(金融システム安定化基金創設構想再浮上)
そして急きょ欧州共通の金融システム安定化基金を創設する構想が再浮上。金融危機が欧州でも拡大しつつある状況を受け、実現への機運が生まれてきた。ベルルスコーニ伊首相は5日、イタリア政府として、欧州の金融システム安定化のために欧州横断型の基金創設を週内に提案すると表明した。ドイツやフランスも同意しているもよう。


(米国では金融安定化法成立を受けた金融危機対策に着手)
米政府は6日、金融危機対策のための緊急経済安定化法成立を受け、不良資産買い取り業務を受託する金融機関の選定など具体的な手続きに着手した。金融危機が深刻化しているため作業を急ぐが、ブッシュ大統領は対策の効果が表れるまで時間を要するとの認識を示した。


(具体的動き)
@同法の柱となる不良資産買い取りの資金を調達するため、財務省が3年物国債を来月から増発する。一方、米連邦準備理事会(FRB)は市場への資金供給を9000億ドル(90兆円)にまで拡大する。
A買い取り業務などを行う“金融安定局”を財務省に設置し、暫定的な担当次官補に証券大手ゴールドマン・サックス出身のカシュカリ次官補(国際経済開発担当)を指名。
B業者選定の暫定的な指針も発表して公募を開始。債券投信大手ピムコや、ブラックロックに参加観測が出ている。
C焦点は、不良債権の評価と、入札方法である。
D実際に不良債権買い取り開始までには、2週間はかかるとの見方が強い。


(当面の見通し)
とりあえず、損失計上に関わる会計上の規制を一時棚上げするなど、緩和措置が実施されよう。また、日本の1990年代後半の金融危機の教訓から、問題金融機関への公的資金注入が危機沈静化の“切り札”になるとの見方が強い。ただし、追加景気対策は大統領選後になりそう。


(重要性を増す今回のG7)
先進7ヶ国財務相・中央銀行総裁会議が10日にもワシントンで開かれる。

今回は、新興国も含め世界経済は同時減速の様相を呈しており、G7では景気を下支えする金融政策や財政政策でも協調する姿勢を取ろう。しかし、欧米では利下げ観測が急速に高まっているものの、日本では、足元で景気が大きく崩れているわけではなく、もともと、低金利が続き、緩和的な金融環境が維持されているとして、仮に欧米が利下げに踏み切ったとしても日銀は追随できないとの見方が強い。

今回のG7会合は、極めて重い意味を持つ。新興国とも連携を強め、中身のある具体策を打ち出せるかどうかが問われる。



=以上=
posted by mori at 14:41| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

信用危機、欧州に飛び火、負の連鎖が世界を循環 10/6

信用危機、欧州に飛び火、負の連鎖が世界を循環

10月6日

森  崇


米政府・議会で金融安定化法に時間を費やして審議している間に、欧州の銀行間資金取引の金利は急伸し、システミックリスク(金融機関の連鎖破たんの危険)が高まっている。

また、米下院による金融安定化法案否決を機に、ヘッジファンド解約が記録的規模に達した。年末までに1000億ドルの解約を予想する調査会社もある。ヘッジファンドの規模は現在1.6兆ドル(ピークには2.2兆ドルあった)である。

リーマン・ブラザーズ破たんにより、機能しにくくなっていた社債やCP(コマーシャル・ペーパー)市場の閉塞感が更に高まった。


こんな状況下、6日、以下のような出来事が起きた。
1.仏銀BNPパリバは、ベルギー・オランダ系金融サービス大手、フォルティスのベルギーとルクセンブルク部門の経営権を145億ユーロ(約2兆400億円)で取得すると発表した。

2.ドイツの政府と金融業界は商業用不動産金融大手のヒポ・レアルエステート・ホールディングの500億ユーロ規模救済策をまとめた。また、国内銀行の預金を全額保護すると発表。


英独仏伊の欧州主要4ヶ国の首脳会議は4日夜、ドイツの反対などで、欧州全体で即効性のある協調策は打ち出せないまま閉幕。今後も各国が独自の判断で対応する方針を確認したにすぎず、欧州全体の統一的な制度は示せなかった。フランスが検討していた3000 億ユーロ(約44 兆円)にのぼる金融安定化の基金創設構想も頓挫した。

救済が相次ぐなか銀行間の貸し渋りが悪化する中、 欧州各国政府が個別に対応しており、不安感が高まっている。これはシステミックな危機であり、欧州金融機関全体への対応が必要だ。基金創設し、域内銀行の資本増強、金融安定化を狙った措置が必要であろう。

欧州諸国の危機対応も足並みがそろわず、欧州で深まった信用不安が世界中に伝播する悪循環に陥っている。欧州不安は、ユーロ安と原油をはじめとする商品安を招いているが、特に資源国の株は暴落している。

米金融安定化法は成立したが、不良債権買取に必要な準備作業に数週間かかるとの見方が強い。もともと金融機関の資本不足、資金再循環に即効性があるわけでなく、そうこうしているうちに、実体経済悪が浮き彫りになってきたと言うのが最近の状況だ。米国内では、実体経済に即効性のある追加策を求める声が上っている。早晩追加景気対策が取られるのではないか。

ワシントンで10日に先進7ヶ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が開かれる。ここでどこまで解決策を示せるかだ。とりあえず米国先導の利下げが実現可能性の高いところか。明日7日(火)にバーナンキFRB議長による講演が予定されている。

株式市場は、パニック的売りに晒されており、本日ザラ場で、ダウ指数は10,000ドルを大きく割った。ただし、引けにかけ急速に戻しに転じている。米国の金融安定化に向けた対策が着手された。大手金融機関の帰趨も見た。不安心理も極度に高まっているが、無いものねだりは相場の常だ。相場の自律反発は近い。


posted by mori at 09:03| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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