2008年03月17日

公定歩合の緊急引き下げと、ベアー・スターンズの買収について

公定歩合の緊急引き下げと、ベアー・スターンズの買収について

3月16日

森  崇


FRBが緊急公定歩合引き下げ
★公定歩合(民間金融機関に資金を貸し出す際の金利)を緊急に0.25%引き下げ年3.25%とすることを全会一致で決定し即日実施。
★証券化商品市場へ資金供給を増やす新制度創設。
★JPモルガン・チェースが同日買収を発表した証券大手ベアー・スターンズに対して最大300億ドルを緊急融資することを決定。

JPモルガン・チェースが16日、証券大手ベアー・スターンズの買収を発表
(合意内容)
★買収価格は約2億7000万ドル。ベアー・スターンズの買収価格は1株当たり2ドルと、14日(金)の引け値(30ドル)の15分の1だった。
★FRBはベアー・スターンズの流動性の比較的小さい資産最大300億ドル相当の支援も発表。
★ベアー・スターンズのシュワルツCEOは、顧客が先週2日間で170億ドルの資金を引き揚げ、債権者がローンの更新を停止する等、実質的に経営破たんしていたことを認めた。
★株式交換方式となり、ベアーの株式1株と、JPモルガンの普通株式0.05473株が交換される。
★JPモルガンは即日付でベアーおよび同社子会社のトレーディング債務を保証し、業務に対する経営監督を提供。買収案は、株主の承認を得ること以外、大した付帯条項はついておらず、4−6月期末までの完了を見込んでいる
★ムーディーズはJPモルガンの格付けを維持した。

市場関係者の見方
(ブラインダー元FRB副議長)
当局が金融システムに資金を供給したところで、直面する問題に効果を示しておらず、金融混乱は更に悪化している。なぜなら、住宅価格下落に歯止めがかからず、金融機関の貸倒が増大し、貸し渋り状況が改善されていないからだ。

(ハーバード大教授のサマーズ元財務長官)
3つの悪循環が景気を悪化させるリスクを懸念。
★消費抑制→企業業績悪化→失業→更なる消費抑制。
★株や債券相場の下落→金融機関が借り手に追加担保を要求→借り手が資産を投げ売りして更に相場を下げる→金融機関が更に貸し渋る。

(債券ファンド最大手、米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のファンドマネジャー、ポール・マカリー氏)
必要なのは、不動産デフレを止めることに焦点を当てた財政当局からの支援だ。
政府は住宅ローンを買い取るべきだ。


私見
ベアー・スターンズの買収価格2ドルは、実質的に経営破たんした価格である。
顧客が先週2日間で170億ドルの資金を引き揚げ、債権者がローンの更新を停止したことが背景と言うが、一旦危ないとなると、取り付け騒ぎ同然の状態になると言うことを示している。また、英紙サンデー・テレグラフが、今週ゴールドマン・ザックスが30億ドルの評価損を発表する見通しと伝えた。ただし、FRBが直接ベアー・スターンズに最大300億ドルを緊急融資することを決定したことは評価できる。ただし、市場は更なるベアー・スターンズを探す“魔女探し”を始めるだろう。その時、このような個別の場当たり的な対処法で大丈夫だろうか。バーナンキ議長も、金融機関に住宅ローンの元本削減を求めるなど、FRBに限界があることを暗に認めている。何よりも、金融市場、信用市場の安定化に向け、FRBの信頼感失墜につながらないことを祈るのみだ。これまでのところ市場の反応はネガティブだ。具体的な処方箋としては、以下が考えられる。

政府機関が住宅ローン担保証券等の妥当値を決める。これにより金融機関の損失が確定(追加損失計上の不安が沈静化する)する。次にこれを買い取るようにすれば、金融機関の資本増強も進めやすくなる。何よりも、金融機関の流動性が高まり、貸し渋り解消にもつながり、利下げ効果も顕著に表れることになろう。





=以上=

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2008年03月13日

米国株相場を見る上での当面の注目点

米国株相場を見る上での当面の注目点

3月12日

森  崇


以下のチャートをご覧いただきたい。青線はダウ指数、赤線は3ヶ月ものTビルの利回りである。ほとんどパラレルに動いている。


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昨年の7月にTビルの利回りが急低下しているが、これがサブプライム危機第一弾である。一旦利回りは上昇するが、9月頃から傾向的に低下している。株もやはり7月急落するが、良く戻し、9月は7月高値を上回った。9月まではサブプライム問題を過小評価していたからに他ならない。ところが、9月以降は、Tビルの利回りが低下するのに歩調を合わせ(振幅は大きいが)、一環して下落傾向を続けている。Tビルは、短期の資金需要を計るバロメータであり、信用収縮の度合いを示している。サブプライム問題が他の証券化商品に波及するとともに、安全度の高い国債、しかも金融政策の対象となるFFレートとの連動性の高い短期のTビルが急速に買われた。株とTビル利回りとの相関度が高まったと言う事実は、取りも直さず、株式相場のシステミック・リスクが信用市場の安定度に極度に依存していることを示す。

特に最近は、Tビルの利回り低下が著しい。ヘッジファンドが、金融機関からの追加担保差入れ要求を受け、手持ちの資産を強引に売却してこれに充当していることの影響が大きい。原油は唯一6日連騰となったが、貴金属や穀物価格はこのところ下落していた。これも、流動性確保の目的で売却の対象になった結果である。

今日は以下の背景で株式相場は下落した。

 @メリルリンチやゴールドマン・サックス・グループなど複数の証
  券会社は、FRBが11日に打ち出した米国債貸与措置が信用市場の資
  金圧力緩和につながらないとの見方を示した。
 AGOキャピタル・アセット・マネジメントは傘下ヘッジファンド
  の顧客による資金引き出しを一時的に停止した。
 B米投資会社ドレイク・マネジメントは傘下最大のヘッジファンド
  の閉鎖を検討していることを明らかにした。

やはり信用市場に関する悪材料が背景だ。以下は、Tビル(3ヶ月もの)の利回りチャートである。このチャートが下落し続ける限り株の反発は困難だ。


clip_20080313_04.JPG

特に、ドル資金の大量供給から、インフレが想起され、ドルが対ユーロで最安値を更新した。トリシェECB総裁や、ユーロ圏財務相会合の議長、ルクセンブルクのユンケル首相兼財務相の「為替市場での過剰な値動きを懸念している」との発言も効果がなかった。また、原油、貴金属等が軒並み大幅反発を開始した。

昨日のFRBの信用危機対策は、信用市場不安緩和には有用だが、抜本的解決にはつながらない。この点を市場は見透かしている。

担保価値の高い国債を借りられるが、永久ではない。いずれ返さねばならない。AAA格以下のMBSや、その他証券化商品については、依然換金化が困難な状況である。

信用危機対策の画期的ポイントは、国債の貸与期間が現行の1日から28日に延長されること、国債貸与の担保として、その他AAA/Aaa格付けの住宅ローン証券(MBS)が認められたことに集約されたと言っていい。

また、信用市場危機に対し、金融当局が真剣に対処しようとしているとの意図も読み取れ、G10強調行動であるとの点も市場に安心感を与えるものだ。

証券化商品の換金化につながる次の一手を見守りたい。





=以上=

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2008年03月07日

公的資金投入を催促する相場に入った

公的資金投入を催促する相場に入った

3月6日

森 崇

(金融機関の自助努力によるサブプライム問題解決は困難に)
昨日のモノライン、アムバックの救済策はまさに失望的内容だった。金融機関の体力低下を示唆するとともに、日を追って、悪材料が増えている。昨日から、今日にかけて以下の通り悪材料が出ている。

1.カーライル・キャピタルにデフォルト通知
プライベートエクイティ投資会社カーライル・グループ傘下のクレジットファンド、カーライル・キャピタルは6日、デフォルト通知を受領。5日の担保差し入れ要請に応じられなかったという。

2.ソーンバーグ・モーゲージにJPモルガン・チェースからデフォルト通知
米住宅ローン会社のソーンバーグ・モーゲージは5日までに、JPモルガン・チェースからデフォルト通知を受領。3億2000万ドルの融資関連で2800万ドル相当の追加担保差し入れに同社が応じられなかったことが背景。同社は他の契約でもデフォルトが発生していると言う。

(ソーンバーグ(TMA)の1年間チャート)
chart_20080307_1.jpg


3.UBSのローン資産投売り観測
JPモルガン・チェースは6日、スイスのUBSが保有するプライムAlt−Aローン資産、250億スイス・フラン(約2兆5000億円)相当を投げ売りした可能性が高いとして、UBSの評価損見積もりを185億フランに引き上げた。
UBSはバランスシート整理の為、仕組み信用商品の保有を積極的に減らす方針のもよう。JPは同時に、UBSの目標株価を56フランから55フランに引き下げた。また、今年無配転落を予想。

4.アムバックの普通株発行計画は失望的内容。
  アムバック・ファイナンシャル・グループは5日、発行済み株式とほぼ同数の10億ドル相当の普通株と、2011 年に株式に転換されるエクイティユニット5億ドル相当を発行する資本増強計画を明らかにした。

 (失望点)
  @増資額が当初の予想(30億ドル)の半分しかなく、AAA格維持はいずれ困難に。
  A今回の資本調達が、銀行団や、取引先からの出資ではなく、普通株の発行であり、既存株の価値の希薄化につながる。
Bクレディ・スイス・グループとシティグループ、バンク・オブ・アメリカ、UBSが引き受ける普通株の発行は、米東部時間6日夜に実施される予定だが、幹事の保証が付いておらず、計画通りの額を調達できるかどうか未定。

(アムバック(ABK)の1年間チャート)
chart_20080307_2.jpg


5.ワシントン・ミューチャル(WM)
  S&Pが同社の信用格付けをBBB+からBBBに引き下げた。同社株はこれで
7日連続安。

(ワシントン・ミューチャル(WM)の1年間チャート)
chart_20080307_3.jpg

6.フレディマック(FRE)とファニーメイ(FNM)
米財務省は6日、住宅金融大手のフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)とファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)が発行する住宅ローン担保証券(MBS)を政府が保証するとの憶測を否定した。2社とも株価は新安値を切り下げている。


私見
問題は、証券化商品の換金化が困難に陥っており、金融機関の手元流動性が低下
していることにある。これが、貸し渋り、貸し剥がしにつながっている。UBSに
いたっては、既成の秩序ある銀行システム内売却をあきらめ、投売りに向かった。

このままだと株式は下離れの動きとなるだろう。今日はシティ・グループ(C)やメリル・リンチ(MER)等の株価が安値を切り下げた。

株安→投資家のヘッジファンド解約→手元流動性が低下して、資金繰り困難に陥ったものが破綻→銀行貸し倒れ増加→金融機関に対する格付け機関による格下げや、ブローカーによる投資判断の引き下げ続出となり、政府の介入(公的資金投入)なしには収拾つかない状況となろう。

昨日、ロイター通信の電子版が「米下院民主党は質の悪化した住宅ローンを政府が買い取る案を協議している」と報じた。これを受け、日本では保険や金融株などが買われた。従って、水面下で話し合いは進んでいると見られる。

また、ボストン連銀のローゼングレン総裁は、6日、複雑な証券化商品を分割し、その中から標準化できるものを束ね、取引所取引で売買可能にするとの提案を行っている。

現在のサブプライム問題を、腫瘍を持った患者に例えるなら、利下げや戻し税を中心とする景気対策は、単に栄養剤を大量に投与するような的外れな政策である。

病巣にメスをあて、腫瘍削除手術を施す根治療法こそ、質の悪化した住宅ローンを政府機関が買い上げる政策である。事態が相当悪化しない限り政府は重い腰を上げないだろうが、相場はこれを催促するフェーズに入った。






=以上=
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2008年03月05日

悲観の中にも、好条件が胎動している

悲観の中にも、好条件が胎動している

3月4日

森  崇

最近、株式相場の下げ渋り傾向が顕著になっている。実際、ネガティブ・キャンペーン中にも、好条件が胎動している。

1.イールドカーブのスティープニング化は銀行に有利
米国の金融緩和はイールドカーブを著しくスティープ化させた。イールドカーブがスティープ化すれば金融機関は預金金利と貸出金利の利ザヤが拡大し、収益性が回復する。以下は2年ものと10年もの金利の差(黄線)である。これがどんどん拡大している状況が見て取れる。

clip_20080305_03.JPG


2.LIBOR3ヶ月ものは着実に低下し、アメリカ・プレミアムも剥落した
現在、ほとんどの銀行の法人向け融資金利を決定するのがロンドン銀行間取引金利(LIBOR)である。この3カ月物が約3%で、FRBが3月18日に金利を0.5%引き下げれば更に低下するだろう。そうなれば、企業の借り入れコストは06年7月のピークの5.49%からほぼ半減することになる。これは企業にとって有利な状況。

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3.FFレート3%は実質金利0%の状態
3月18日にFFレートが0.5%引き下げられ、2.5%になれば、実質金利は0%(コアCPIは2.5%である)となる。バーナンキFRB議長は、この状態を長く据え置くことに否定的である。以下のグラフからスタグフレーションが顕在化した80年時を見ていただくと分かるように、金融市場の落ち着きは早く、すぐに利上げに入った。今回とよく似た2003年イラク戦争前でも、FFレートは6%強から、開戦後には1%まで下げられた。しかし、株式相場はFFレートが底打ちするはるか前の2003年初頭に底打ちしている。当時は、ITバブル崩壊から、株式相場より、不動産市場に資金が流入してバブルを形成した。今回は、何がバブルのか?当面商品市場に資金が流入しているが、もし、マクロ経済指標が回復を始めれば、株式にも流入するだろう。債券はパンパン買われてしまっており、不動産も傷口は大きい。消去法から株式しかない。

clip_20080305_05.JPG


以上が最近の株式相場下げ渋りの背景として指摘できるだろう。





=以上=
posted by mori at 09:28| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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